地球が見える 2008年
現代のオアシス都市・アブダビ、アラブ首長国連邦
図右上の暗褐色のアブダビ島がアブダビの市街地です。緑の多い都市域は砂地よりも光の反射率が低いことから暗く見えます。雨が非常に少ないため植物への灌水や生活用水にはほとんど海水蒸留水が使用されています。図右上端のウンムアルナール島にある淡水化処理設備は日本の技術で建設されました。市街の周囲に目を転ずると一際白い砂州が見えてきますが、ドバイとの競合を避けるために環境と文化をテーマとして大規模な観光開発が進められている島々です。特に幸福という名のサディヤット島にはルーブル美術館分館などの数多くの美術館や国立博物館を集めた世界的な文化センターが建設されることになっています。
図左端には白い弓形のビーチに面し広大な庭園に囲まれた7つ星ホテルのエミレーツパレスが見えています。サーモンピンクの瀟洒な佇まいと豪華な室内装飾からまさに宮殿のようなホテルと言われています。このほか市内を眺めると、島の北端に海の玄関口ザーイド港、市内中央には芝生の緑も鮮やかなゴルフ・乗馬コース、右下辺にバティーン空港、島への入り口付近にはスポーツ競技場や世界で三番目に大きいといわれるシェイク・ザーイド・モスク(4万人収容、5,627平方mの世界最大の絨毯)を見ることができ、都市機能が空間的に高密度に集積された街であることが窺えます。
アラブ首長国連邦は、1960年代初頭にこの地に石油が発見され、英国がスエズから撤退した後の1971年に自治権の強い7つの首長国から成る連邦国家として誕生しました。建国以来日本とは極めて親密な関係を保っています。日本の国技大相撲の優勝力士にアラビア伝統のコーヒーポットを模した友好杯とガソリン1年分の副賞が贈られることが良く知られています。そして、原油高の現在、原油総輸出量の60%を日本に輸出する産油国として、重要な貿易相手国の一つとなっています。 最近は7つの首長国のうち観光産業に力を入れているドバイに脚光が当っていますが、アブダビ首長国はUAEの国土の約80%、総産油量の90%以上を占めるなど政治・経済の中心地です。そして全世界の原油埋蔵量の約10%を占め、今後100年間石油採掘が可能と推定されています。ペルシャ湾とルブアリハリ沙漠に抱かれたアブダビは、潤沢なオイルマネーを媒介として世界中の人々に活力と憩いの場を提供する現代のオアシス都市です。
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