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地球が見える 2006年

GLIがとらえた地球(後編)−GLI成果集より−

今回は、前編(9月19日掲載)に引き続いて、EORCが8月11日に発行した冊子「気候変動の解明に向けて-Global Imagerが捉えた地球-」に収められたトピックスの中からいくつか紹介いたします。
図1 GLIで求めたエアロゾル全体に占めるススの割合
GLIには1km分解能のセンサとしては世界で初めて、波長380nmの近紫外域の光を測定するチャンネルが備えられていました。このチャンネルを用いることで、陸域のエアロゾルの測定ができるようになりました。
図1は、陸域上空のエアロゾルの光吸収特性をもとに算出したエアロゾル全体に占めるスス成分の割合です。アジアや東欧でススの割合が大きいこと、つまり、光を吸収しやすいエアロゾルが多くなっていることが分かります。この結果は、地上における人為起源のスス排出量の統計値とも整合していることが分かっています。IPCC*の第三次レポートによると、エアロゾルは地球を冷やし、二酸化炭素等の濃度増加による地球温暖化を和らげる効果が大きいことが指摘されています。しかし、ススのような光吸収性のエアロゾルが増加すると、逆に温暖化に転じて働くことが懸念されています。全地球規模でのエアロゾルの量、そして質の変動を監視することは、地球の放射収支を見積もる上で大変重要です。
図2 GLIにより2003年4月に観測された北半球の積雪粒径の空間分布
地球が温暖化すると、最も早くその影響を受けるのは、北極や南極などの雪氷圏であると言われています。これは、高緯度地域を覆っている雪氷が、温度の上昇に大変敏感に応答するためです。
図2は、GLIデータから抽出された、北半球全体での積雪粒子の大きさの分布を表しています。緯度の高い低温域では粒子が細かく、逆に低緯度の温暖な地域ほど粒径が大きいことが分かります。このことからも、温度が高いところほど氷粒子がすばやく大きくなる傾向があることが分かります。このような、積雪の氷粒子の大きさと温度の関係を理解することは、地球温暖化の進行とともに雪氷圏がどのように変動していくのかを予測する上で大変重要です。
図3 GLIによる2003年の全球の年間純一次生産量(NPP)分布
陸上を覆う地表面の中で、長期間にわたって二酸化炭素(CO2)を固定する能力が大きいのは森林です。植物は光合成を通してCO2を炭素として固定し酸素を大気中に放出します。この炭素固定プロセスは、大気中のCO2の濃度変動に影響を及ぼしますが、逆に、CO2の濃度変動が引き起こす気候変動によっても植物の成長量は変化します。
図3は、GLIによる7ヶ月間のデータから推定した年間の植生純一次生産量(NPP)の分布図を示しています。南アメリカやアフリカの熱帯雨林でNPPが大きく、逆に植生に乏しい沙漠で小さいことが分かります。植生の生育にとっては水も不可欠なので、このような植生の成長量を監視することを通して、地球の炭素循環と水循環をより良く理解することが可能となります。
図4 GLIによる2003年4-6月平均の海洋基礎生産力(OPP)
地球表面の7割を占める海洋は、海面を通じて大気と熱や運動エネルギーだけでなく、水や二酸化炭素などのガスのやり取りを行います。地球が温暖化する際には、海洋は短期的には増加した大気中の二酸化炭素を吸収すると言われていますが、それが海洋中の生物活動や化学反応を通じて深層に運ばれた後、固定されるのか、あるいはいずれ戻ってくるのかなど、長期的にどのように働くのかは分かっていません。
図4は、GLIデータから算出した3ヶ月平均の全球の海洋基礎生産力(OPP)で、海中で光合成により海洋植物プランクトンが取り込んだ二酸化炭素の固定量を表しています。中高緯度帯の沿岸やペルー沖から赤道に沿って東西に伸びる海域では、下層から豊富な栄養塩が供給されることによって植物プランクトンが増加し、OPPが高くなっています。このように衛星によって全球規模の海洋基礎生産力を監視することを通して、海の生態系の理解や水産資源管理、そして地球温暖化のメカニズムの把握などへ貢献できるものと期待されています。

残念ながら環境観測技術衛星みどりII (ADEOS-II)は2003年10月25日、電源系統の故障で突然機能を停止し、搭載されていたGLIも運命を共にしましたが、上で見てきたように、およそ10ヶ月間にわたり、GLIは地球上の様々な現象を見つめ続けました。その結果、GLIが有していた機能は、十分に我々の期待に応えるものであり、気候変動のメカニズムを解明する上で必要な多くの地球科学的な物理量の抽出が可能であることが実証されました。

GLIミッションで培ったこの貴重な経験と解析技術を次世代に継承し、更なる長期間の観測システムの構築・運用を実現するためにも、私たちは、現在、次期衛星観測ミッションとして、地球環境変動観測ミッション(Global Change Observation Mission: GCOM)を提案し、ミッション移行への準備を進めています。このミッションでは、環境変動プロセスの研究や予測モデルの開発、気象・漁業情報の発信などを、他の地上・衛星観測ミッションや多くの研究機関と協力して実施することで、効果的に地球の気候変動の解明に貢献することを目指しています。

本GLI成果集の冊子版をご希望の方は下記アドレスに住所・氏名をお知らせください。郵送にてお送りいたします。



本GLI成果集の冊子版をご希望の方は、ADEOS-II/GLI サイエンスプロジェクト事務局までお知らせください。郵送にてお送りいたします。

* IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)。

参照サイト:
IPCCホームページ(英語)
第三次レポート(評価報告書)の概要(財団法人地球産業文化研究所のページ)

観測画像について:
(図1〜図4)
観測衛星: 環境観測技術衛星 みどりII (JAXA)
観測センサ: グローバルイメージャ(GLI) (JAXA)
観測日時: 2003年4月 (図1),2003年4月 (図2),2003年4〜10月(図3),2003年4〜6月(図4)
 オリジナル画像の地表解像度は、図1および図4では0.25°、図2では5km、図3では1kmで作成されたものです。

関連サイト:
GLIがとらえた地球(前編)−GLI成果集より−
ADEOS-II利用研究プロジェクト
GLIサイエンスプロジェクト
GLI成果集
AMSR/AMSR-E成果集
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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