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地球が見える 2006年

GLIがとらえた地球(前編)−GLI成果集より−

2002年12月14日に打ち上げられておよそ10ヶ月間運用されたJAXAの環境観測技術衛星みどりII(ADEOS-II)には、高性能の多波長光学センサ「グローバルイメージャ」 (GLI)が搭載されていました。このGLIの足跡と解析事例を集めた成果集「気候変動の解明に向けて-Global Imagerが捉えた地球-」が、このたび完成しました。本成果集では、GLIセンサの目的や仕様(1章)、様々な観測波長帯を通して見た地球の画像(2章)、そして大気・海洋・陸・雪氷の各分野における観測事例(3〜7章)、最後に将来ミッション構想(8章)を簡単に紹介しています。これまでのセンサにはないGLIのユニークな特徴や、NASAのMODISセンサのデータ解析にも適用可能な事例などが盛り込まれており、今後光学センサを用いた地球観測を考えておられる研究者の方々や、高校・大学等で関連する授業を行う先生の方々にも、ご活用いただけるものと考えております。

「地球が見える」では、このGLI成果集に収められたトピックスの中からいくつかを、前編・後編の2回に分けて紹介します。

GLIセンサは、中規模の波長分解能および空間分解能をもつ機械走査型光学センサで、高性能マイクロ波放射計(AMSR)とともにみどりIIに搭載され、地球表面を観測しました。
図1 GLIの観測波長帯、大気透過率と主な観測対象物の分光反射・射出特性
GLIが備えていた最大の特徴は、可視域から熱赤外域にかけて36もの観測波長帯を有していたことです。図1は地球上の主な観測対象物の分光反射・射出特性にGLIの観測波長帯の位置を重ね合わせたものです。それぞれの波長帯の位置や幅は、観測対象物の反射特性や大気の透過率を考慮して、観測目的毎に細かく決められました。図2aには、実際にGLIが観測した東北日本付近のトゥルーカラーRGB合成画像を、図2bには全36チャンネルの観測画像をそれぞれ示します。
図2a GLIが観測した
東北日本のRGB画像
図2b GLIが観測した東北日本の全36チャンネル画像
これらの図から、以下のような特徴が分かります。
  1. 大気分子による光の散乱は、波長が短くなるほど強くなる性質があるため、暗い海洋上では近紫外の380nmから赤の680nmにかけて、短波長側のチャネル程反射率が高くなっている(成果集内の関連部分:2.7節, p.20)
  2. 763nm、1,135nm、1,380nm、6.7µm, 7.3µm, 7.5µmは酸素や水蒸気の吸収によって暗くなっている(2.9節, p.22)
  3. 植生の反射率が高くなる700nmより長波長側では、陸と海とのコントラストが強くなる(2.5〜2.6節, p.18〜19)
  4. 陸や雲は865nm〜2,200nmで高い値だが、雪氷域は波長が長くなるにつれ次第に暗く見える(2.8節, p.21)
  5. 3.7µmより長い波長では、地表や雲などの熱放射が見える(2.4節)。特に3.7µmの光には、熱放射成分に加えて、太陽光の反射成分が含まれており、見かけの温度が他の波長よりも高くなっている
  6. 海色観測のための高ゲインチャネル(Ch. 6, 9, 10, 11, 12, 14, 16, 18)では、北海道西方のエアロゾルや、東北沖のかすかな海のパターンが見える(2.3節, p.16および2.10節, p. 23)
以上のような観測対象物の分光反射特性の特徴を定量的に利用することによって、後編で紹介するように、GLIのデータからはさまざまな地球科学的な物理量プロダクトが作られています。
図3 GLIの1日の観測範囲を表す全球輝度画像
GLIが有していたもう一つの特徴は、観測幅が1,600kmと広いことです。図3に示すように、GLIは一日に地球を14周しながら、ほぼ2日に一度の割合で地球上の全ての領域を観測することができました。その代わり、地表分解能は1km(6チャンネル分のみ250m)に抑えられており、現在運用中の陸域観測衛星ALOS(日本名:だいち)搭載の可視センサAVNIR-2(チャンネル数:4、観測幅70km、地表分解能10m)とは観測目的が明確に異なっていることが分かります。GLIは、36ものチャンネルを用いて高頻度・高感度で地球全域を観測し、全球規模の炭素循環、海洋基礎生産力やエネルギー循環の把握、そして環境変動のモニタリングを通して、気候変動メカニズムの解明等を目的として開発されました。
(次回へつづく)



本GLI成果集の冊子版をご希望の方は、ADEOS-II/GLI サイエンスプロジェクト事務局までお知らせください。郵送にてお送りいたします。

観測画像について:
(図2及び図3)
観測衛星: 環境観測技術衛星 みどりII (JAXA)
観測センサ: グローバルイメージャ(GLI) (JAXA)
観測日時: 2003年4月10日 (図2)、2003年9月22日 (図3)
 図2および図3のRGB画像は人の目で見た色に近くなるように赤(波長678nm)、緑(545nm)、青(460nm)のチャネルをRGBに割り振っています。また、図2の36チャンネル画像は、1〜29チャンネルまでは大気上端の太陽光反射率を、30〜36チャンネルは輝度温度を、値が低いところが青色に、値が高いところが赤色になるように色づけたものです。

関連サイト:
ADEOS-II利用研究プロジェクト
GLIサイエンスプロジェクト
GLI成果集
AMSR/AMSR-E成果集
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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