JAXAでは、1995年4月に地球観測研究センター(当時:宇宙開発事業団地球観測データ解析研究センター)を、2006年5月に衛星利用運用センター(当時:衛星利用推進センター)を設立しました。日本の地球観測衛星を開発する中核的機関として、地球観測、データ解析・利用研究を推進し、地球環境を宇宙から把握することで、災害対策や国土の強靭化、地球規模課題の解決への貢献を目指しています。
衛星地球観測技術で豊かな社会を実現する
第一宇宙技術部門 地球観測統括・衛星利用運用センター長 前島 弘則
「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」グテーレス国連事務総長が世界に向けて強いメッセージを発しました。それを裏付けるように、我が国の気象庁と欧州中期予報センターが、2024年の日本及び世界の平均気温が統計開始以降最も高かったと発表しました。近年、数十年に一度と言われるような激甚な気象現象が頻発し、世界中で大きな被害が発生しています。
気候変動などの地球規模課題を解決するには、地球システムの総合的な理解を深め、地球環境の将来予測精度を向上させる必要がありますが、基盤情報となる地球環境の現状把握のための観測が欠かせません。我が国では地上観測網が発達していますが、国土を取り巻く海域での観測は容易ではありません。また、世界には地上観測網が十分に整っていない国々が多く存在します。衛星地球観測は、地球全体を俯瞰的、継続的に観測する最も有効な手段です。
衛星地球観測データは、気候変動に加えて、その広域性と速報性を活かして、防災、農林水産、インフラ監視、国土保全などの分野においても有用であり、産学官関係機関の皆様と共にその利活用を進めています。
JAXA第一宇宙技術部門は、未来社会のニーズを見据え、その実現に必要なソリューションを生み出す能力を高め、さらに必要なイノベーションの創出に向けて、地球観測システムの研究開発と利活用を通じて、国内外の様々なパートナーと協力しながらより良い未来の実現を目指します。
2025年4月
第一宇宙技術部門 地球観測研究センター長 落合 治
JAXAでは、気候変動等の地球規模課題、防災・減災、国土強靭化、インフラ管理など様々な社会課題の解決につながる研究開発を推進しており、地球観測研究センター(EORC)は、地球観測衛星から得られる観測データによって、地球環境を科学的に理解し、その知見により地球科学の発展と社会課題の解決に寄与する役割を担っています。
EORCは、データ受信・記録・処理・提供中心であった地球観測センター(EOC)から発展し、地球科学研究の推進、地球観測データの校正・検証、応用研究を行う新しい組織として1995年4月に設立されました。2025年、EORCは30周年を迎えるとともに、JAXAの新しい中長期計画が始まる年です。この重要な節目を迎え、これまでの歩みと成果を礎に、地球観測衛星データの価値創出のさらなる発展に向け、活動の充実化及び成果最大化を進めてまいります。
EORC新設時には、JAXAの地球観測衛星は2機が運用されておりましたが、それから現在に至るまで合計14機が打ち上げられ、地球環境やその変化を観測したデータを届けてきました。2025年時点において、国際パートナーとの協力も含めると、8機の地球観測衛星を運用しており、そこから送られてくる観測データを科学界や社会に届けると共に、先進的な研究成果を創出しようと日々努力を重ねています。
先進的な成果の事例として、2024年5月に日欧共同ミッションの「はくりゅう」(EarthCARE)による観測を開始し、世界で初めて雲やエアロゾルの立体構造を高精度に観測しました。この「はくりゅう」のデータを用いて気候変動予測の不確実性を低減させるという課題に取り組むなど、気候変動や地球環境変化を把握する研究を推進しています。 また同年7月には「だいち4号」(ALOS-4)が打ち上がり、だいち2号の後継としてより観測幅を拡大しより広域に、かつ観測頻度を高く観測することが可能となりました。このようなJAXAで培ってきた衛星での観測・解析技術に加えて、地上観測のデータとも融合させ、AI(人工知能)などの最新の情報処理技術を使って解析することにより、将来予測を含む高付加価値な情報を多くの方に提供していくことが期待されていると考えています。
今後も急速に変化する地球環境と社会のニーズに応えることを目指し、EORCはこれまでに積み重ねてきた科学的知見を活かして、衛星データと科学的な情報に基づき地球環境の変化を理解し、そして今後起こりうる変化を予測する研究を推進してまいります。
2025年4月
JAXA地球観測の概要
近年の夏の暑さや「ゲリラ豪雨」「線状降水帯」などの大雨によって「地球温暖化」を肌で感じている方は多いのではないでしょうか。こうした地球温暖化をはじめとした気候変動、あいつぐ自然災害、これらは地球規模で取り組むべき重要な課題となっています。 この課題に立ち向かい、地球環境の将来予測を行うためには、現状を客観的に把握することが重要です。そのためには地上からの観測だけではなく、地上からは近づくことが困難な陸地や海も含めて広範囲に宇宙から地上を観測することが必要となります。 これらのデータを蓄積し、活用する手段を提供することで、社会に貢献することを目指します。
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組織情報
JAXAでは、地球観測研究センター、衛星利用運用センター、地球観測センター、西日本衛星防災利用研究センターの4つ組織で地球観測研究・データ利用促進の業務を行っております。
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■ 地球観測研究センターについて
地球観測研究センター(EORC: Earth Observation Research Center)は、地球観測衛星のデータ取得から処理・利用研究を担当するセンターで、1995年4月に設立されました。 EORCでは、主に次の業務を行っております。
(1)衛星データの解析および科学的研究
地球観測衛星から得られる観測データを解析し、地球科学として意味のある物理量を導出するためのアルゴリズムの開発や、衛星データの校正検証を行い、衛星データの品質維持に努めております。 また、気象、農林水産資源の管理、災害対策、国土保全、地球環境変動等の分野において、衛星データの利用研究を実施・推進しています。これらの事業を円滑に実施するため、利用研究プロジェクトを設置しています。
(2)観測センサの研究および地上データ処理システムの開発・運用
(3)関係機関との協力
更なる衛星データ利用の拡大を図るため、国内外の関係機関、国際組織との協力を通じて、データ相互利用・データ利用研究の推進を行っております。
地球観測研究センター パンフレット日本語版(PDF 1.5MB) 地球観測研究センター パンフレット英語版(PDF 1.5MB)
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■ 衛星利用運用センターについて
衛星利用運用センター(SAOC: Satellite Applications and Operations Center)は、地球観測衛星のデータ利用促進や地上システムの開発・運用・維持管理を担当するセンターで、2006年5月に設立されました。 SAOCでは、主に次の業務を行っております。
(1)人工衛星のデータの利用促進
行政や民間での、衛星データを用いた課題解決への取組の支援 防災システムの構築・運用、国内外の大規模災害時の緊急対応 アジア諸国との協力や国際調整 様々な分野で衛星利用を推進するための利用促進活動や相談窓口対応
(2)人工衛星の地上システムの開発・運用・維持管理
地球観測衛星の衛星管制・データ処理・保存・提供のための地上システムの開発・運用・維持管理 上記に関連する対外調整、新規技術・業界動向の調査・導入
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■ 地球観測センターについて
地球観測センター(EOC: Earth Observation Center)では、画像処理・検査・解析を行っています。ここで処理されたデータは国内外の地方公共団体、研究機関、大学などに提供され、環境問題の解明や災害監視、資源調査といった分野で活用されています。また、観測データがより有効に利用されるよう、関連するデータを国際的に収集し、データセットとして提供するというプロジェクトも世界的な協力のもとで進められています。
■ 西日本衛星防災利用研究センターについて
西日本衛星防災利用研究センター(RSCD: Regional Satellite Applications Center for Disaster Management)では、山口県、山口大学と協力して、衛星データの自治体防災への活用、災害解析技術の開発、衛星データ解析が可能な人材の育成等を行っています。三者による実証的な取り組み成果は、九州・中国・四国大学地域防災連絡会議等を通じて他自治体に、さらにはセンチネルアジア、国際災害チャータ等を通じて海外に展開しています。 また、山口県、山口大学が主導する衛星データを利用した新事業創出、宇宙教育が可能なリーダの育成等宇宙教育活動の支援を行っています。
寄附金のお願い
JAXAでは、皆様のご厚情に基づく寄附金を貴重な財源とした研究開発も進めております。地球観測研究・データ利用のさらなる発展のためにご支援をお願いいたします。
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