GPMとは

“高精度かつ高分解能で、全球上の降雨の把握を行う”
国際衛星観測計画“GPM”について詳しく紹介します。

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GPMへの社会的・科学的期待

降水マップにTRMMが与えた影響
降水マップにTRMMが与えた影響

衛星による全球降水マップの作成

GPMにおいては、複数衛星に搭載されたマイクロ波センサデータの組み合わせも、さらなる課題となります。

衛星観測の登場までは、全球的な降雨分布を海陸の偏りなく作成することは困難でした。当初は、静止気象衛星等の赤外放射計による雲の温度(雲頂温度)から降雨量を推定していましたが、これは雲頂温度(すなわち、雲の高さ)と地表での降雨強度には統計的に一定の関係があるということを仮定していました。しかしながら、雲の分布と降雨の分布は必ずしも一致する訳ではなく、雲頂温度と降雨強度の関係も必ずしも全球で一定ではありません。一方、その後に登場したマイクロ波放射計観測では、海上で降雨からの放射をより直接的に測ることが可能となり、赤外放射計による推定に比べて、降雨推定精度が大きく向上しました。このため、1980年代より、これらの衛星観測データを利用した全球降水量分布プロダクトの作成が始まりました。とくに、TRMM衛星の打ち上げ以降、複数のマイクロ波センサ(マイクロ波放射計およびマイクロ波サウンダ)データによる全球降水マップの作成に、大きな進展がありました。GPMの前身ともいうべきこれらの成果について、GPMへ取り込みおよび、さらなる発展が期待されています。

全球降水分布プロダクトの空間分解能の比較
全球降水分布プロダクトの空間分解能の比較

全球降水マップの高度化

TRMM登場以前に作成された全球的な降水分布プロダクトは、主に、全球の気候値を求めることを目的としており、時間分解能は数日〜月平均と粗く、また、衛星(赤外放射計とマイクロ波センサ)のデータを地上の雨量計で校正するためにリアルタイム性は低いのが特徴でした。

1997年のTRMM衛星の打ち上げにより、マイクロ波放射計の降水推定アルゴリズムに大きな進展がありました。TMIの空間分解能は、低い衛星高度のために、それまでの主力であったSSM/Iに比べて1/3程度となり、細かい雨の構造まで捉えることができるようになりました。加えて、同時搭載されている降雨レーダおよび可視赤外センサとの比較から、それぞれのアルゴリズムにおける仮定についても問題が明らかとなり、その結果、降水量推定アルゴリズムの改良が進められました。その後に打ち上げられたAMSR-E(2009年現在も運用中)は、TMIと同等以上の空間分解能を持つマイクロ波放射計であり、約700kmの極軌道をとるために走査幅も広く、全球を観測可能です。これらの両方の効果が相まって、より高い時間・空間分解能の全球降水量プロダクトが米国を中心に多く作成されるようになりました。さらに、データ提供についても、リアルタイム性を意識したものが増加してきました。

 「世界の雨分布速報」作成の流れ
「世界の雨分布速報」作成の流れ
観測データをネット公開
観測データをネット公開
サイクロンNARGISによる降雨
サイクロンNARGISによる降雨

GSMaPと「世界の雨分布速報」

日本発の研究プロジェクト、GSMaP(Global Satellite Mapping of Precipitation)は、GPM時代の利用を念頭におき、複数のマイクロ波放射計観測データを用いて、信頼できる降水物理モデルに基づいた降水強度推定アルゴリズムを開発し、降雨レーダ、静止衛星の赤外放射計データをも総合的に利用して全球の高精度高分解能降水マップを作成することを目的としています。

高時間分解能降水マップを作成するためにはマイクロ波放射計で空間的に未観測領域があることによる誤差(サンプリング誤差)が問題となります。そこでGSMaPでは、静止気象衛星搭載赤外放射計データから推定される雲の移動ベクトルやカルマンフィルタを用いて、マイクロ波放射計観測の間を補間する手法を開発し、緯度経度0.1度格子、1時間の分解能の全球降水マップを作成可能となりました。

現在、pre-GPMプロダクトともいえるデータと画像が、GSMaPアルゴリズムを利用して、準リアルタイムでインターネット配信されています。JAXA/EORCの「世界の雨分布速報」では、TRMMやその他の衛星観測から推定した全球の雨量分布(0.1度緯度経度格子、1時間平均の雨量分布)を観測から約4時間遅れで提供しています。

全球洪水予警報システムの概念図(IFNet 提供)
全球洪水予警報システムの概念図(IFNet 提供)

GPMデータの配信と現業利用

GPMコア衛星およびコンステレーション衛星群が収集したデータは、JAXA、NASAをはじめとする各国の地上局で受信され、その後、日米それぞれのGPMデータ処理システムへと送られます。処理システムでは、送られたデータを準リアルタイムで処理し、3時間毎の全球降水マップなどの高次プロダクトとともに、関係機関へと配信します。同時に、データセンターにおいて研究用の標準プロダクトが作成・提供されるとともに、画像や情報はインターネットなどを通じて、一般にも公開されます。関係機関においては、これらのデータや画像を用いて、気象予報や洪水予測など、さらにそれぞれの目的にあった形での利用を行います。

このように衛星を使って「水」をリアルタイムにモニタし、そのデータを即座に提供することで、GPMは気象予報、国土管理、農業・漁業への実利用分野や、災害予測・警報発令などの防災分野にも大きく貢献することを目指しています。

GPMによる観測データは世界各国で、科学研究分野のみならず社会・経済活動にも幅広く応用されることが期待されており、21世紀のわたしたちの生活と密接に関わるものとなるでしょう。

さまざまな分野での利用
さまざまな分野での利用

さまざまな分野での利用

「降水」は、さまざまな分野における基礎的な情報です。過小な降水は、ダムの貯水量や食料生産の減少だけなく、長く続けば干魃となって生態系の変化を招き砂漠化を進行させます。これに対して、豪雨や台風などによる過度の降水は、河川流量の増加によって洪水が引き起こされるだけでなく、地盤が緩んでいる土地においては土砂災害に結びつくことも多々あり、我々の社会生活に大きな被害をもたらすのです。

毎年決まった季節にもたらされる降水であっても、その開始や終了時期が平年より大きくずれた場合には、植物の生長や農作業に影響を及ぼして、食料生産減少の原因ともなります。さらに、気候変動モデルによる計算では、温暖化に伴い、水循環が加速し、降水分布の変化や集中化をもたらすなどの影響が考えられています。このように、降水の変動は、平年値から少し揺らぐだけでも、我々の生活の基礎である飲み水や食料生産を左右し、洪水や干魃により社会生活基盤を脅かし得るものなのです。

GPM時代の高頻度かつ高精度の降水観測データは、水循環のメカニズムの解明に役立つとともに、集中豪雨のような短時間現象の予報から季節予報などの長期予報に至るまでの気象予報精度向上、そして、河川や農業用水などの水資源管理に寄与することが期待されています。