雲とエアロゾルを知る地球の気候に対する雲とエアロゾルの影響
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このコーナーでは、地球大気の放射エネルギー収支の研究において、
これまでに知られている雲とエアロゾルの大気科学的・気象学的知見について、
トピックスを挙げて紹介します。

放射収支と水循環

真夏の猛暑のとき、直射日光が当たるととても暑いですが、雲の影に入ると涼しく感じたことはありませんか。また、真冬の夜、雲に覆われていないときに比べて、晴天のときは放射冷却によって冷え込みます。地球の気温は、太陽から入射する放射エネルギーと地球が放出する放射エネルギーのバランスによって決まり、これを地球の放射収支と呼びます。雲は、地球を冷やす効果と温める効果の両方を持ち、この放射収支に大きな影響を与えます。

そもそも、雲はどのように発生し、成長するのでしょうか。雲の元(“原材料”)は気体の水である水蒸気と大気中に浮遊する粒子(エアロゾル)です。水蒸気が上昇気流等により持ち上げられ冷やされると、エアロゾルを核として、その周りに水蒸気が水に凝結します(-40度以下のとても低い気温の環境下では、水蒸気から直接氷の粒が発生することもあります)。小さな雲粒は、周囲の水蒸気を取り込みながら成長していきます。ある程度大きくなると、雲粒子は自らの重さで落下するようになり、今度は周囲の落下速度の遅い粒子を取り込みながら、さらに大きくなり、降水粒子へと成長します。このように、雲は降水の発生源となり、そのため、台風・極端豪雨の発生は雲の成長メカニズムと密接に関わり、また、干ばつなど雨が極端に降らない現象も、雲の発生・成長過程が関係します。

このように、雲は地球の放射収支に影響するとともに、水蒸気から降水を生む過程で地球の水循環の一部を構成しています。その際、放射収支と水循環は、それぞれ独立に雲から影響されるのではなく、雲を介して相互作用し、地球の気候に影響を与えています。

凝結核による雲形成

凝結核による雲形成

雲と放射収支・水循環

雲と放射収支・水循環

雲の日傘効果と毛布効果

上述したように、地球全体の気温は、太陽から地球に入射する放射(太陽放射)と地球から宇宙に熱が放出する放射(地球放射)のエネルギーバランス(放射収支)によって決められます。 雲には、太陽放射を宇宙へ反射して地表へ到達するエネルギーを減らす「日傘効果(冷却効果)」と、地表から宇宙への熱の放射をさまたげてエネルギーを地球大気にたくわえる「毛布効果(温室効果)」の両方があり、前者は地球を冷却、後者は地球を加熱する作用が知られています。

どちらの効果がどのくらい作用するのかは実際には単純でなく、雲の高さや重なり方、それぞれの雲の光学的な性質などによって大きく影響を受けます。
雲の日傘効果と毛布効果

雲とエアロゾルの相互作用

大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)は、それ自体が地球のエネルギー収支に作用するほか、雲の上にあるか下にあるかで、大気全体でのエネルギー収支を変えてしまいます。

エアロゾル自体が太陽光を散乱・吸収して地球のエネルギー収支への影響を与えることは、エアロゾルの直接効果とよばれています。エアロゾルの直接効果によって大気が加熱、あるいは冷却されるのかは、エアロゾルの種類や成分によっても性質が異なります。たとえば、硫酸塩粒子などは太陽光をよく散乱して冷却効果を示すのに対して、ブラックカーボン(黒鉛)粒子では太陽光を吸収して加熱効果を示すという具合です。

エアロゾルが存在することで、雲の発達や消滅、あるいは長時間の雲の維持がうながされるなど、エアロゾルと雲形成の間には深いつながりがあることが知られています。
雲とエアロゾルの重なり

雲とエアロゾルの重なり

エアロゾルの間接効果

エアロゾルの間接効果