目標
上記のALOSミッションを達成するためには、地形図データなどのデータプロダクトを実利用者に提供するばかりでなく、ALOSデータを利用して、環境・資源分野から情報処理分野に至る幅広い分野のサイエンスや利用化研究を推進することが不可欠である。本プログラムは、特に関連の深いサイエンス分野及び利用化研究分野について、推進目標を設定し、実現のための行動計画を記述する。 推進目標のうち、特に重要と考えられ、構築のためにNASDAのリソースを集中的に投入すべきと考えられるデータプロダクト、及びそのためのアルゴリズムを戦略目標とよぶ。それは一般的な目標からALOSミッションとの関係、波及効果、投入リソースの制約などを考慮して選定される。一般的な目標が主としてRAを通じて推進されるのに対し、戦略的な目標はEORCなどを中心として計画的に達成する。
2.1 一般的な目標
サイエンス及び利用化研究推進プログラム(以降推進プログラムと呼ぶ)を通じて、サイエンスや利用化研究のどの分野にどのような貢献をすべきか、そのために必要なデータプロダクト、アルゴリズムは何かを、主要分野ごとに以下に整理する。なお、分野の選定に関しては、IGBPにおけるコアプロジェクトの分類を参考にした。 1) 土地利用・被覆研究土地利用や土地被覆の分布や変動を把握し、そのメカニズムの解明、変動モデルの構築に寄与する。そのためには以下のデータプロダクトの作成と作成アルゴリズムの開発が必要である。 (1) 高精度DEM(数値地形モデル): (2) オルソ画像(PRISM画像、AVNIR-2画像、PALSAR画像)とそれらを利用した土地利用・被覆分布データ: 浸食・斜面崩壊などによる地形変化・流路変化の計測、標高データを用いた地形分類や解析に寄与する。そのためには以下のデータプロダクトの作成と作成アルゴリズムの開発が必要である。 (1) DEM(数値地形モデル): (2) オルソ画像(特にPALSAR): (3) 土壌浸食や堆積などに起因する地形変化データ: 炭素の循環などを中心とした植生のダイナミクスの解明や、それを利用した農作物モニタリングや草原の生産力推定、人為的な影響による植生量の変化研究などに寄与する。そのためには同時期に観測を行うADEOS-2データなども併用した以下のデータプロダクトの作成や作成アルゴリズムの開発が必要である。 (1) 森林分布のモニタリング: (2) バイオマス分布計測: (3) 森林管理への応用: (4) 草地や農作物の成長量や収量モニタリング: (5) バイオマスバーニングなどの人為的な影響による植生変化のモニタリング: (6) 砂漠化モニタリング: 4-1) 表面過程 植生状況の把握や土壌水分量の計測手法の開発や土壌水分データセットなどの構築をベースとして、地表面過程の解明に資する。 (1) 植生活動のモニタリング: (2) 土壌水分量分布の推定: (3) 流出解析: (1) 高精度DEM: (2)土地利用・被覆分布と変動量データセット:
4-2) 水質汚濁解析
より高精度な地形データや土地利用・被覆データセットを提供することにより、水質汚濁負荷の発生量の推定や、汚濁負荷の流下・流達分析の高度化に資する。 (1) 高精度DEM: (2) 土地利用・被覆分布と変動量データセット: 積雪、陸氷及び海氷について、高分解能なALOS搭載センサデータを使用して、以下の解析を高精度に行うことによって、気候及び水資源変動の把握等に貢献する。 (1) 積雪面積、積雪量の把握や変動量の計測: (2) 氷床及び氷河の変動量の計測と解析: (3) 海氷モニタリング: 5-1) 沿岸域研究 沿岸海域の海洋汚染、波浪、海上風、沿岸流、海氷や海浜変形・漂砂などに関連する情報を抽出することにより、海上交通業務、海洋汚染防止、漁業などの沿岸域で行われる経済活動を支援する。そのためには、以下のアルゴリズムの開発とプロダクトの作成が必要である。 (1) 沿岸域油汚染データセット: (2) 沿岸域における高精度DEM: (3) 沿岸域波浪・海上風データセット: (4) 沿岸域海氷データセット: PALSARを活用し、あるいはADEOS-2衛星などの他の衛星データの併用手法などを開発することにより、沿岸海域及び外洋域の大気・海洋相互作用、波浪、海洋諸現象のダイナミクスに関する研究に貢献する。 (1) 沿岸地形・大気・海洋相互作用: (2) 波浪・海流相互作用と様々な海洋現象の検出: 以下のような分野に関して、データセットの提供やそのための手法開発を通じて貢献する。 6-1) 地殻変動地形分類・解析、流路解析等に利用する。 6-2) 火山噴火モニタリング火山噴火活動に伴う山体の変形をPALSARによるインターフェロメトリック観測により、モニタリングする手法を開発する。 6-3) 斜面災害急傾斜地を中心とした高精度DEMをPRISMやPALSARにより作成し、斜面崩壊の危険性などを評価する手法を開発する。その際、斜面及び斜面周辺の土地利用・被覆データセットを併用し、斜面表面の風化・浸食状況、水の浸透状況の推定や、崩壊時の被害推定に役立てる。 6-4) 洪水・氾濫解析とシミュレーション従来データが十分でなかった地域において高精度DEMを利用することにより、短期流出(洪水)解析や氾濫解析手法の適用地域を大幅に広げることを可能にし、それを通じて解析手法の高度化や、現象解明に貢献する。その際、土地利用・被覆データも利用することにより、解析精度の向上を図るばかりでなく、被害想定や避難方策検討の高精度化も推進する。 6-5) 津波解析従来データが十分でなかった地域において高精度DEMを利用することにより、津波の遡上解析などの適用地域を大幅に広げることを可能にし、それを通じて解析手法の高度化や、現象解明に貢献する。その際、土地利用・被覆データも利用することで、解析精度の向上を図るばかりでなく、被害想定や避難方策検討の高精度化も推進する。 6-6) 災害モニタリング技術の開発干ばつ、洪水、大規模火災、斜面災害、地震災害などの災害状況(溢水面積・焼失面積の推定など)の把握や、被害発生の状況推定(たとえば、農作物生産量への影響)を迅速化、高精度化する手法を開発し、関連する災害研究の推進に資する。 7) 資源探査手法の研究鉱物資源に関する探査技術の高度化を図る。PALSARなどの画像にDEM等も統合した解析手法などを検討する。 8) 空間データ基盤構築手法研究8-1) データ基盤の構築手法の高度化 さまざまなサイエンス研究や実利用の基礎となる高精度DEMや地物データを効率的に作成するために、地形計測、地物などの自動認識・3次元計測技術の高度化を図る。3次元計測に関しては、PRISM画像を対象とした画像標定手法の開発、ステレオマッチング手法の開発が必要となる。PALSARに関しては、インタフェロメトリ計測アルゴリズムの開発が必要となる。道路・大規模構造物、都市域などの地物の自動判別・認識に関しては、PRISM、AVNIR-2、PALSARなど画像に、計測DEM等も統合した解析手法などを検討する。 8-2) 超大量画像の管理・検索手法の高度化地図や位置座標に結びつけて超大量画像を蓄積・管理する技術や、地図や位置座標からの画像の効率的な検索手法、配信方法など、ALOSデータをテストケースとして利用することで、空間データ基盤を支える超大型画像アーカイビングシステムに関する研究を推進する。 9) マイクロ波の散乱・干渉特性に関する基礎的研究地形補正手法の高度化やインターフェロメトリック観測の高精度化、ポラリメトリック観測の高度化と応用分野の開拓を目標として、以下に示すような基礎的な研究を進める。 9-1) ポラリメトリックデータのデコンポジション手法の研究PALSARで取得するポラリメトリックデータについて、支配的な後方散乱特性を抽出するデコンポジション手法の研究を行い、観測対象物の散乱特性を考慮した分類等の分野に応用する。 9-2) ポラリメトリック・インターフェロメトリ解析手法の研究リピートパスで取得されたポラリメトリックデータを使用し、インターフェロメトリック解析を行うことによって、寄与する媒体の散乱解析する研究を行う。応用分野としては、森林の高さ(樹高)の算出や分類精度の高精度化等である。 10) 高分解能光学センサによる高精度観測に関する基礎的研究光学センサによる宇宙からの高精度観測を可能にするのと同時に、次期高分解能光学センサの開発に資することを目的として、特に以下のような項目に関する研究を行う。 (1) 衛星の位置・姿勢決定精度(姿勢及び姿勢変動率)が搭載光学センサーの正確なポインテング特性及び分解能特性に及ぼす影響を解析・評価し、その影響を低減する方式の研究を行う。 (2) 衛星打ち上げ時の衝撃、経年変化、や内部の温度変化等が光学系アラインメント(光学ベンチとその取り付け構造体を含む)歪み特性、光電変換特性、分解能特性などに与える影響の解析及び評価を行う。 (3) 不均質地表面観測データに対する大気の多重散乱(特に空間的・時間的に大きく変動するエアロゾル等)の影響を解析し、観測データから地表面アルベドを高速・高精度に推定するコードの研究開発を行う。 (4) センサー固有のMTF特性及び大気のMTF特性等により劣化した観測データを高精度に復元処理する方式の研究を行い、最適なMTF補正フィルタを開発する。 2.2 戦略的な目標以上のような一般的な目標を効果的に達成するために、以下のような戦略的な研究プロダクトを構築・開発する。 1)データプロダクト (1) 高精度DEMとオルソ画像(PRISM、AVNIR-2、PALSAR画像を対象): (2) バイオマス分布データ(主にPALSAR画像による。全球): (3) 地表面変位量データ(地震危険地域のみ): (4) 沿岸域環境データ a) 波浪・海上風データ、油汚染海域データ: b) 沿岸域海氷データ:
(1) 地形自動計測およびオルソ画像作成手法の高精度化、高効率化 (2) バイオマス計測手法の高精度化(DEMやAVNIR-2画像、その他の衛星画像の併用) 高精度DEMやバイオマス分布データなどの計測精度を向上させるためには、センサーの校正・検証が不可欠である。また、センサの校正・検証に不可欠な基礎的な研究は次世代の高性能センサを開発するためにも重要な研究である。そのため、校正・検証、及びセンサの精度向上を目的とした基礎的な研究を戦略目標として追求する。
(1) 輝度校正の高精度化 (2) DEM等の高精度化 (3) 大気効果の補正 また、PALSARに関しては、ラジオメトリック精度向上を目的とした基礎研究を戦略目標として追及する。
(1) 規格化後方散乱係数算出の高精度化 (2) インターフェロメトリックSARデータの高精度化 (3) ポラリメトリックSARデータの高精度化 |