2011年7月27日から新潟県中越と下越を中心に局地的な豪雨が降り、大雨に伴う災害が発生しました。この豪雨により、堤防の決壊や床上・床下浸水が起こり、各地で被害がもたらされています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、国際災害チャータを通じて、カナダ宇宙局(CSA)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の協力により提供された、RADARSAT-2(レーダーサットツー)*1TerraSAR-X(テラサー・エックス)*2衛星の観測データの解析を実施しました。
図1: RADARSAT-2観測による新潟県画像(2011年8月1日観測) (クリックで拡大画像へ)
図1は、RADARSAT-2で、災害後の2011年8月1日16時42分(日本時間、以下同じ)に観測された画像です。
今回、信濃川周辺において特徴ある変化がほとんど見られなかったため、8月1日の観測時点で信濃川周辺の水が引いていることが考えられます。
RADARSAT-2を使った過去画像との比較解析の結果、変化があったと思われる箇所を図1の黄枠部分で示しました。黄枠部分を拡大した画像を図2、図3に表示します。
図2: RADARSAT-2による信濃川周辺の災害前後比較画像
画像左:災害前2011年7月7日観測、画像右:災害後2011年8月1日観測
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図2はRADARSAT-2の信濃川周辺の画像で、画像左に7月7日5時55分観測の画像、画像右に8月1日観測の画像を並べて表示したものです。この図で色が暗くなっている個所は、後方散乱(画像の明るさに相当)が小さい個所を示し、冠水した可能性が考えられます。
図2の左右の画像を比較すると、黄色い円の中で8月1日観測画像(図右)の方が暗くなっている個所があることが分かります。図2の判読より、場所によっては8月1日時点で水が残っている個所があることも今回の判読から分かりました。
図3: RADARSAT-2による阿賀野川周辺の災害前後比較画像
画像左:災害前2011年7月7日観測、画像右:災害後2011年8月1日観測
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図3はRADARSAT-2の阿賀野川周辺の画像で、左に7月7日観測画像、右に8月1日観測画像を並べたものです。災害前後の画像を比較すると、8月1日時点で阿賀野川の中州の形状が今回の豪雨により大きく変化していることが分かります。
図4: 7月30日と8月1日の信濃川周辺の比較 (クリックで拡大画像へ)
(左:TerraSAR-X、7月30日観測 右:RADARSAT-2、8月1日観測)
図4は2011年7月30日に観測されたTerraSAR-X(テラサー・エックス)(図左)と、同地域を8月1日に観測したRADARSAT-2の画像(図右)を並べたものです。
両方の図の中央右に見える黒い線が信濃川であり、7月30日から8月1日にかけて川幅が狭くなり、水が引いた様子がわかります。
取得された画像は、内閣府、国交省、農水省、新潟県、他 防災関係機関に提供しています。
なお、JAXAでは今後も、国際災害チャータやセンチネルアジアの協力を得て、当該地域の観測、データ解析を継続する予定です。
(*1) RADARSAT-2(レーダーサットツー):
RADARSAT-2はCSA(カナダ宇宙局)及びMDA(MacDonald, Dettwiler and Associates)が共同で開発・運用している地球観測衛星で、Cバンド合成開口レーダを搭載しています。このレーダは、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR)と原理は同様ですが、PALSARとは異なる波長のマイクロ波を用いて観測を行っています。
(*2) TerraSAR-X(テラサー・エックス):
TerraSAR-Xは、DLR(ドイツ航空宇宙センター)およびEADS Astrium社が共同で開発・運用している地球観測衛星で、Xバンド合成開口レーダを搭載しています。このレーダは、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR)と原理は同様ですが、PALSARとは異なる波長のマイクロ波を用いて観測を行っています。
2011/8/2: 「テラサー・エックス」(TerraSAR-X)による新潟豪雨災害の観測結果
©JAXA EORC