ALOSによる災害観測

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(4)

2011年3月11日14時46分頃、東北地方の太平洋沖で国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が起こりました。宮城県栗原市で震度7、岩手県から栃木県にかけての広い範囲で震度6強が観測されるなど、極めて強い揺れが観測されました。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2011年3月14日10時12分頃（日本時間）に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)により現地の緊急観測を実施しました。ScanSARモードで観測したもので分解能は100mですが、350kmを一度に観測できるという特徴を持ったものです。

図1:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像全体図(R: 2009年1月21日観測　GB: 2011年3月14日観測)

図1: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図
(R: 2009年1月21日観測　GB: 2011年3月14日観測)
(クリックで拡大画像へ)

図1は、PALSARでの災害前の2009年1月21日観測の画像を赤に、災害後の2011年3月14日観測の画像を緑と青に割り当てたカラー合成画像です。

図2:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像から、岩手県～福島県沿岸部(R: 2009年1月21日観測　GB: 2011年3月14日観測)

図2: 岩手県～福島県沿岸部 (R:地震前、GB：地震後)
(クリックで拡大画像へ)

図2は、比較的津波被害が大きかった岩手県南東部から福島県にかけての沿岸部の画像です。更に拡大したものを図3(a)～(d)に示します。

図3左上(a):陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像から、岩手県南東部の拡大図

図3(a): 岩手県南東部の拡大図

図3右上(b):陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像から、宮城県牡鹿半島付近の拡大図

図3(b): 宮城県牡鹿半島付近の拡大図

図3左下(c):陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像から、宮城県仙台市～亘理郡付近の拡大図

図3(c): 宮城県仙台市～亘理郡付近の拡大図

図3右下(d):陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR；パルサー)による災害前後のカラー合成画像から、福島県北東部の拡大図

図3(d): 福島県北東部の拡大図

図3: 岩手県から福島県の各地の拡大図。
ただし被災域を強調するため色調を補正している。
(クリックで拡大画像へ)

(a)は岩手県南東部、 (b)は牡鹿半島付近（宮城県）、 (c)は仙台湾付近、(d)は福島県北東部のカラー合成画像です。海岸付近の赤色に変化している箇所は災害後に反射が弱くなったところで、津波により冠水したと考えられます。

JAXAでは今後も「だいち」による当該地域への観測を継続していく予定です。

(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。

©JAXA EORC