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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による2010年チリ地震にともなう緊急観測 (9)

2010年2月27日15時34分頃(日本時間、以下同じ)、チリ中部の沿岸地下(チリの首都サンティアゴの南西335km、深さ35km)を震源とするマグニチュード8.8の地震が発生しました(地震の規模及び位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)では地震による被害状況を把握するため、地震発生直後から陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による観測を実施してきました。昇交(アセンディング)軌道から全部で9パスの観測を行い、地震前に取得した同じ軌道からの画像を使用し、差分干渉解析(DInSAR解析)による地殻変動状況の把握を試みました。「だいち」は、南南東から北北西へ向けて飛行しながら、地震により影響のあったと思われる領域を広範囲に渡って観測しました。なお、解析には全て高精度軌道情報を使用しました。

図1:2010年2月27日15時34分頃に発生したチリ中部の沿岸地震発生後、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により観測された被災地付近の範囲(青枠は図2で示す各パス(p111-119)のPALSAR観測領域を表す。赤い星印は本地震の震央位置。数値標高データはSRTM3を使用、なお、同一パス内で南北に分かれているパス(p114, 115)については、途中でPRFが変更した事に起因する解析結果の欠損部分)

図1: 全体図(数値標高データはSRTM3を使用)
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青枠は図2で示す各パス(p111-119)のPALSAR観測領域を表します。赤い星印は本地震の震央位置を示しています。なお、同一パス内で南北に分かれているパス(p114, 115)については、途中でPRFが変更した事に起因する解析結果の欠損部分です。

図2: 2010年2月27日15時34分頃(日本時間)に発生したチリ中部の沿岸地震に伴う地殻変動を検出するため、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のPALSARにより地震後の観測画像と地震前に取得した同じ軌道からの画像を使用して作成した差分干渉処理画像(地殻変動図、これまでに実施したチリ地震に関する観測結果)

図2: PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)
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図3: 地震後のPALSAR強度画像(これまでに実施した2010年2月27日発生のチリ地震に関する観測結果)

図3: 地震後のPALSAR強度画像
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図2は地震前と地震後のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図3は地震後のPALSAR強度画像を示したものです。図2の差分干渉画像から、南北約500kmに渡る沿岸部に非常に多くの干渉縞が、また首都・サンティアゴのような内陸部でも明瞭な干渉縞が確認できます。これは、地震に伴って広範囲に渡る大規模な地殻変動があったことを示しています。また、より内陸部では地殻変動ではないノイズと思われる干渉縞も多く見られます。このように、地震後実施されてきた「だいち」による観測から、今回の地震に伴い、最大で3.5mを超える、極めて広い範囲に及ぶ地殻変動が起こったことが分かりました。

(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮像が可能です。

(注2) 差分干渉処理:
PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星−地面間の距離』に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星−地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。青→緑→黄→赤→青の色の変化は、地面が衛星に近づくことを表わします(今回の観測では画像の西側から東側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく、すなわち西向きの水平変動もしくは隆起を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を示します。

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