陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の緊急観測結果について(6)

平成20年6月14日(日本時間、以下同じ)に岩手県南西部で発生したマグニチュード7.2(気象庁発表)の地震(岩手・宮城内陸地震)による被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、平成20年6月24日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測では、平成18年6月19日に取得した同じ軌道からの画像を使用し、差分干渉処理によって地殻変動状況を把握いたしました。「だいち」は北から南へ飛行しながら、震央を含む領域を観測しました 。(図1)

図1:観測地域全体図

図1: 全体図
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図2左:地震前と地震後の画像を比較したPALSAR差分干渉画像
図2右:南北約200kmに渡る地震後(平成20年6月24日)の陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のPALSARによる画像

図2左: PALSAR差分干渉画像 右: 地震後PALSAR強度画像
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図2左は地震前と地震後の画像を比較した差分干渉画像、図2右は南北約200kmに渡る地震後のPALSAR画像を示したものです。図2左で推定される断層直上及びその近傍(震央の周辺)では、狭い範囲での変動(変動の勾配)が大きすぎて、差分干渉処理では変動量の検出が困難であると思われます(虹色が不明瞭で、これを干渉度が低い(=検出が困難)と言います)。しかし、その領域の東側では明瞭な干渉縞が確認でき、少なくとも、4周期=47.2cmの衛星から遠ざかる向きの地殻変動があったことがわかります。これは断層東側の西方向への水平変動と沈降を示していると考えられます。今回の「だいち」による観測から、岩手・宮城内陸地震に伴って広い範囲に渡る大きな地殻変動が生じたことが確認できました。

JAXAでは今後も「だいち」による岩手・宮城内陸地震被災地の観測を継続していく予定です。

(注1) 震央の東側では緑→青→紫→赤→黄→緑の色の変化(緑の領域から緑の領域まで、ここまでで1周期=11.8cm。この順番の色の変化は、衛星から遠ざかる変動を表わします)が4周期確認されるため11.8cm×4=47.2cmの変動と推定されます。

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