FORMOSAT-2による災害観測

「フォルモサット・ツー」(FORMOSAT-2)による平成23年(2011年)台風12号豪雨災害の観測結果(4)

2011年9月2日から4日にかけて大型で強い台風12号の通過に伴い、四国、近畿、中国、東海地方を中心に広範囲で記録的な大雨が続き、土砂崩れ、堤防の決壊や床上・床下浸水などが起こり、各地で被害がもたらされています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2011年9月5日、6日に引き続き、9月7日10時57分頃(日本時間)に観測、センチネルアジア*1を通じて台湾の国家実験研究院(NARL)の協力により提供された、FORMOSAT-2 (フォルモサット・ツー)^*2衛星のデータ解析を実施しました。

図1:2011年9月7日10時57分頃(日本時間)に観測したフォルモサット・ツー画像(黄色枠：図2～7の範囲)

図1: 観測した画像全体 (クリックで拡大画像へ)
観測日時: 2011年9月7日10時57分頃 (日本時間)
黄色枠: 図2～7の範囲

図1は、今回観測した画像全体の様子を示したもので、フォルモサット・ツーのバンド1、2、3を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており、人の目で見た色に近くなっています。

図2:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された奈良県十津川村長殿地区周辺の様子(約8km×6kmのエリア)、右/災害前の2009年2月15日に陸域観測技術衛星「だいち」搭載センサ、アブニール・ツーで観測された奈良県十津川村長殿地区周辺の様子(約8km×6kmのエリア)。

図2: 奈良県十津川村長殿地区周辺の様子 (約8km×6kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2009年2月15日)
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図2は奈良県十津川村長殿地区周辺の災害後の2011年9月7日に観測されたFORMOSAT-2(フォルモサット・ツー)と災害前の2009年2月15日に観測された陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)^*3です。黄色で示した箇所では土砂崩れ(茶色)、赤色で示した箇所は土砂崩れが起きたことによる堰止め湖と思われます。

図3-1:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された和歌山県那智勝浦町那智川周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)、右/災害前の2009年9月16日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された和歌山県那智勝浦町那智川周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)。

図3-1: 和歌山県那智勝浦町那智川周辺の様子 (約5km×5kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2009年9月16日)
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図2:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された和歌山県那智勝浦町紀伊天満駅周辺の様子 (約1km×1kmのエリア)、右/災害前の2009年2月15日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された和歌山県那智勝浦町紀伊天満駅周辺の様子 (約1km×1kmのエリア)。

図3-2: 和歌山県那智勝浦町紀伊天満駅周辺の様子 (約1km×1kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2009年9月16日)
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図3-1は和歌山県那智勝浦町那智川周辺を拡大した画像で、図3-2は紀伊天満駅周辺を拡大した画像です。災害後の2011年9月7日に観測されたFORMOSAT-2(フォルモサット・ツー)と災害前の2009年9月16日に観測された陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のパンシャープン画像^*4で、トゥルーカラー画像で表示しています。図3-1の黄枠では那智川に沿った周辺の山が土砂崩れを起こし、土砂が集落へ流れ込んでいる様子が確認できます。また、図3-2では、橋梁が流失している様子(黄枠)と河口付近の砂浜が流出している様子(赤枠)を確認することができました。

図4:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された三重県熊野市熊野駅周辺の様子 (約2km×2kmのエリア)、右/災害前の2009年2月15日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された三重県熊野市熊野市駅周辺の様子 (約2km×2kmのエリア)。

図4: 三重県熊野市熊野市駅周辺の様子 (約2km×2kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2009年9月16日)
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図4は三重県熊野市の熊野市駅周辺を拡大したパンシャープン画像で、黄枠で示した箇所では橋梁(鉄道)が流失している様子を確認することができました。

図5:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された和歌山県田辺市深谷地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)、右/災害前の2009年9月16日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された和歌山県田辺市深谷地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)。

図5: 和歌山県田辺市深谷地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2010年10月6日)
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図6:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された和歌山県田辺市高野地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)、右/災害前の2009年9月16日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された和歌山県田辺市高野地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)。

図6: 和歌山県田辺市高野地区周辺の様子 (約4km×4kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2010年10月6日)
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図7:左/災害後の2011年9月7日にフォルモサット・ツーにより観測された和歌山県田辺市円谷地区周辺の様子 (約5km×5kmのエリア)、右/災害前の2009年9月16日に陸域観測技術衛星「だいち」で観測された和歌山県田辺市円谷地区周辺の様子 (約5km×5kmのエリア)。

図7: 和歌山県田辺市円谷地区周辺の様子 (約5km×5kmのエリア)
左図：災害後(2011年9月7日)、右図：災害前(2010年10月6日)
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図5から図7は和歌山県田辺市深谷、高野、円谷地区周辺をそれぞれ拡大したパンシャープン画像で、黄色い枠で示した付近において土砂崩れが発生している様子を確認することができました。

取得された画像は、内閣府、国土交通省、近畿地方整備局、中部地方整備局、国土交通省国土技術政策総合研究所、海上保安庁、奈良県、和歌山県、三重県等の防災関係機関に提供しています。
なお、JAXAでは今後も、国際災害チャータやセンチネルアジアの協力を得て、当該地域の観測、データ解析を継続する予定です。

*1 センチネルアジア:
センチネルアジアはアジア太平洋地域の災害管理に資するため地球観測衛星画像から得られる災害関連情報を共有する活動です。JAXAをはじめとするアジア太平洋地域の宇宙関係機関、アジア防災センター(ADRC)をはじめとする防災関係機関、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)をはじめとする国際機関、および大学、研究所などが協力して推進しています。得られた衛星画像、解析結果などはWebサイトに公開されています。また、WebサイトのGISにより各種の関連災害情報をGISで表示・解析することが可能です。

*2 FORMOSAT-2(フォルモサット・ツー):
FORMOSAT-2は台湾2機目の高解像度地球観測衛星です。国家宇宙計画局(NSPO、現:台湾国家宇宙センター)によって開発された初のリモートセンシング衛星で、カラー情報を持つ解像度8mの光学センサと、白黒ですが解像度2mの光学センサを搭載しています。

*3 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):
青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。2009年2月15日、2009年9月16日、2010年10月6日の画像は0度で取得したものです。

*4 プリズムとアブニール・ツーによるパンシャープン画像とは、2.5mのものが識別できる能力(地上分解能)を持つプリズムと、地上分解能10mですがカラー情報を持つアブニール・ツーを用いて、擬似的に地上分解能2.5mのカラー画像にしたものです。
また、フォルモサット・ツーによるパンシャープン画像とは、地上分解能2mと8mの光学センサを用いて、擬似的に地上分解能2mのカラー画像にしたものです。