データ利用研究事例
11. 水文·水資源
SARによる土壌水分の推定
JERS-1 SARによる土壌水分空間分布の推定

JERS-1 SARの重ね合わせ画像
Fig. 1: JERS-1 SARの重ね合わせ画像
(青: 1月, 緑: 5月, 赤: 8月で表示)
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50m解像度での土壌水分マップ
凡例
Fig. 2: 50m解像度での土壌水分マップ
(1993年8月17日).
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チベット高原の位置 陸域地表面に存在する土壌水分量は水文学、気象学とそれらの相互作用を通した地球環境問題研究の中で重要なパラメータの一つです。特に寒冷地では、積雪や凍土の融解にともなう水文プロセスが気象現象の季節変化や年々変動のようなグローバルな大気循環に影響を及ぼしていると考えられています。
 
Fig. 1は1993年に得られたチベット高原タングラ山脈内のJERS-1 SAR画像を表しています。1月と5月のSAR画像を8月の画像に3次アフィン変換とニアレストネイバー法を用いて重ね合わせました。黄色や赤色に見える領域は永久凍土帯特有の地形であるアースハンモック帯で地表面が粗く、夏季、大変湿っている場所を表しています。水色は山岳氷河の涵養域と一致しています。
 
Fig. 2はFig. 1から推定されたチベット高原内における50m解像度での土壌水分空間分布図です。冬季、高原の土壌表面は完全に凍結しており、液体の水分は存在していないと考えられます。そこで、冬季に得られたSAR画像に表面散乱と体積散乱両成分から構成される散乱モデルと、二つの表面粗度パラメータ、表面高さの標準偏差と表面相関長さの関係式を適応して表面粗度分布図を作成しました。夏季、土壌水分は降雨や凍土融解によって増加されます。そこで、夏季の土壌水分マップはSAR画像に散乱モデルと表面粗度分布図を適応することによって作成されました。黄色から青色になるほど高い土壌含水率を表しています。また黒色は標高の高い山地のためにマスク処理した領域と土壌水分を推定できなかった画素を表しています。この結果から定量的な土壌水分量だけでなく、空間分布特性も知ることができます。

NASDA EORC編集JERS-1 Earth Viewより抜粋
©JAXA EORC

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