校正・検証


校正係数および後方散乱係数への変換(係数および変換式)

Pi-SAR-L2の成果物に含まれるデジタル値(DNあるいはI,Q)を規格化後方散乱断面積(σ0,Normalized Radar Cross Section)に変換する式を以下に示します。SIGMA-SARでは多少異なった表式をとります。校正係数(CF)は時間とともに変化する可能性がありますが、当面は固定値として使用してください。

2012年4月以降、苫小牧の校正サイトを定期的に観測し、得られたデータの解析および校正作業を継続しています。使用した機器は一辺3メートルを一葉とする三面コーナー反射鏡などです。校正係数は映像の焦点に依存しないといわれる積分法を用いて校正係数を求めました。その結果を表1に示します。表1はSIGMA-SARの代表値です。標準偏差は0.5dB弱あります。

データプロダクト

表に示す5種類のプロダクトを提供します。使用するSAR処理ソフトウェアとして、JAXA/EORCのSIGMA-SARを使用しており、すべて、4偏波の複素・振幅データを提供しますが、両成果物共に苫小牧森林と三面コーナー反射鏡を用いて偏波校正と絶対値校正を行っております。
2004年以降は校正係数に少し変動が表れておりますので、正確なσ0を求めるには実験毎に決められた校正係数をご使用ください。

表1 校正係数
CF mean (dB) std (dB)   constant A (dB)
CF1 (2012.4.1-2014.3.31)
-79.882
1.16
  81.0
CF1 (2014.4.1-)
-84.792
0.412
  81.0

注)Pi-SAR-Lの評価では、サイズの小さいコーナー反射鏡のレーダ断面積は理論値よりも約3デシベル小さくラジオメトリック校正に不適切なことがわかりましたので、Pi-SAR-L2では3mのコーナー反射鏡に限定して校正運用を行い、校正係数を決定しています。

 (1)

 (2)

注1)θinciは入射角。
注2)sigma-sar, slcは4ルック時の値である。
注3)< >は平均化処理である。
注4)Pi-SAR-Lの校正・検証ページへのリンクはこちら

ポラリメトリック校正

ポラリメトリック校正とは(3)で示される線形方程式に含まれる、送信歪み行列、受信歪み行列、雑音行列等を、地上に設置したコーナー反射鏡等、散乱特性が既知のターゲットを用いて決定することをいいます。また、得られた歪み行列の逆行列を(3)の両辺に作用し、(4)のように散乱行列を求めることも言います。

 (3)

ここに、Zpq は観測対象物の未校正観測散乱行列(受信偏波をp 、送信偏波をqで表現する)。Spqを校正された散乱行列、 Aは振幅の校正係数、λは観測波長、γはSARと観測対象物間のスラントレンジ、δ1234 はH/V偏波間のクロストーク、f1 ,f2は送信系、受信系のH/V偏波間のチャンネルバランス、Nは雑音マトリクスです。

一度歪み行列が求まれば、それ以降は(センサーが安定している範囲内において)同じ行列演算をすれば所望の散乱行列を得ることができます。(なお、(4)では、雑音を無視しています)

 (4)

JAXA/EORCの行うポラリメトリック校正では、コーナー反射鏡と一様森林(苫小牧の国有林)を組み合わせた方法を用いています。ポラリメトリック校正とは、言い換えれば、受信と送信のバランスをとることです。各散乱行列成分を後方散乱係数に変換するときに必要となる校正係数は、このバランスがとられた状態では偏波に依存せず唯一です。このようにして校正係数をコーナー反射鏡で求めたものが上で紹介したものです。

なおShh,Shv等散乱マトリクス成分は複素数であり、IおよびQで表現したのちに、(2)にあてはめると、各偏波でのσ0pqが求まります。
校正係数CFは10log10A2に対応します。

なお、Pi-SAR-L2校正に関する論文は下記1)、2)、3)、4)を参照ください。

リファレンス