「だいち2号」による台湾・花蓮地震の観測結果について

Posted: Feb. 16, 2018, 9:00 (UTC)

 台湾東部で2018年2月6日に発生したマグニチュード6.4(USGS)の地震について、JAXAは地震予知連絡会SAR 解析ワーキンググループならびセンチネルアジアからの要請に基づき、「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」により観測し、データを関係機関に提供しました。表1に観測の概要を示します。

表1:だいち2号(ALOS-2)による緊急観測されたデータリスト
観測日(UTC)軌道番号観測モード偏波観測方向ビーム番号
(1)2018年2月8日32Stripmap 3mHHU2-7
(2)2018年2月10日136Stripmap 6mHH+HV+VH+VVFP6-3
(3)2018年2月11日27Stripmap 10mHH+HVF2-7
 図1: 台湾の全体図(右上)と震源域周辺の標高図ならびにALOS-2による観測範囲。黄緑が2018年2月8日(UTC、以下同じ)に観測された軌道番号32(表1の(1)、南行軌道左側観測)の撮像範囲、赤が2018年2月10日に観測された軌道番号136(表1の(2)、北行軌道右側観測)の撮像範囲、青が2018年2月11日に観測された軌道番号27(表1の(3)、南行軌道右側観測)の撮像範囲。図中の黒い長方形は図2、図3の解析範囲(花蓮市周辺)を示す。星印は震源の位置を表す。
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図2:2016年11月5日と2018年2月10日の観測データによる干渉画像(表1の(2))
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 図2は表1(2)の2018年2月10日15時50分(日本時間11日0時50分)の観測データと、2016年11月5日(日本時間6日)の観測データを用いた差分干渉画像です。この画像では色は視線方向の地表面の変位量を表し、地表が衛星から遠ざかる方向に動いた場合は赤色、近づく方向に動いた場合には青色に変化します。この結果から、震源からおよそ20 km離れた花蓮市付近の図中Aで10 cmほどの衛星から遠ざかる変動(沈降もしくは東向きの変動)、図中Bで25 cmほどの衛星に近づく変動(隆起もしくは西向きの変動)があることが分かりました。また、図中の北側には変位の不連続が見られ(点線)、この線に沿って地表断層が表れている可能性があります。

図3:2017年6月18日と2018年2月11日の観測データによる干渉画像(表1の(3))
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 図3は表 1(3)の2018年2月11日3時48分(日本時間12時48分)の観測データと、2017年6月18日の観測データを用いた差分干渉画像ですが、衛星の視線方向が図2とは異なるため、変動分布も異なります。図3では図中Cの花蓮市の北東側で40 cmほどの衛星に近づく方向の変動(隆起もしくは東向きの変動)が見られました。また、図2と同様に変位の不連続が見られます(点線)。


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