「だいち2号」によるニュージーランド地震の観測結果について

Posted: November 16, 2016, 7:30 (UTC)

2016年11月13日に発生したニュージーランドの地震について、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)は搭載するLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2; パルサー2)により観測を実施しました。観測は11月15日23協定世界時(日本時間11月16日午前8時)に行われ、観測データは宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA )より関連機関へ提供されました。表1および図1に観測の概要を示します。

表1. 緊急観測の内容
観測時間 (UTC) 軌道番号 観測モード 偏波 観測方向 ビーム番号
2016/11/15 194 ScanSAR HH+HV Right W2
図1:「だいち2号」搭載PALSAR-2による2016年11月15日23協定世界時(日本時間11月16日午前8時)分頃の緊急観測が行われた範囲 図1: 緊急観測が行われた範囲
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11月15日の観測結果:
図2は今回2016年11月15日と、2016年10月18日のほぼ同時刻の同じ条件による観測データを用いた干渉画像です。この画像では色は位相差を表し、地殻変動があると色が緑色から変化します。カイクラ市より南西へ約70km およびクラレンス市北西部に南西-北東方向への走向を持つ約100km の二つの主要な地殻変動が検出されました。特にクラレンス市北西部の変動は計測可能な範囲に限っても3m 以上の視線方向に近づく変位(東方向もしくは上方向)が検出され、Kekerengu Fault およびClarence Fault と呼ばれる二つの断層に挟まれた範囲ではそれ以上の変位があると考えられます。

図2: PALSAR-2による2016年11月15日と、2016年10月18日のほぼ同時刻の同じ条件による観測データを用いた干渉画像
図2: PALSAR-2による干渉画像
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図3は、上記と同じ 2016年10月18日と同年11月15日の画像から画像処理によって海岸線の変化個所を抽出したものです。海岸付近の赤色部分は地殻変動による隆起で地震後に表れた新たな陸地と考えられ、図中の番号で示した (1) グース・ベイ (Goose Bay)、(2) カイクラ (Kaikoura)、(3) ハーフ・ムーン・ベイ (Half Moon Bay)、(4) ウォード (Ward) の各地域に多く見られます(遠洋では海上の船舶、内陸部では農地の作物の生育などが誤抽出されている可能性もあります)。

図3:  2016年10月18日と同年11月15日の画像から画像処理によって検出された海岸線の変化箇所
図3: 検出された海岸線の変化箇所
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図4は、図2のうち特に大きな地殻変動が検出された領域のコヒーレンス差画像です。コヒーレンス差画像は災害前(2016年7月26日と2016年10月18日)と災害前後 (2016年10月18日と11月15日) の画像類似性の変化より算出されます。濃い橙色の領域は災害前後の間に地表面が大きく変化したことを意味します。季節的な変化等も含まれます。

図4: 図2のうち特に大きな地殻変動が検出された領域の災害前(2016年7月26日と2016年10月18日)と災害前後 (2016年10月18日と11月15日)の画像類似性の変化より算出されたコヒーレンス差画像
図4: コヒーレンス差画像
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参考:
2011年2月28日: 2011年ニュージーランド地震における観測結果

参考文献:
New Zealand Active Faults Database: https://data.gns.cri.nz/af/
Langridge, R.M., Ries, W.F., Litchfield, N.J., Villamor, P., Van Dissen, R.J., Rattenbury, M.S., Barrell, D.J.A., Heron, D.W., Haubrock, S., Townsend, D.B., Lee, J.A., Cox, S., Berryman, K.R., Nicol, A., Stirling, M. (2016). The New Zealand active faults database: NZAFD250. accepted to New Zealand Journal of Geology and Geophysics 59 (1)

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