「だいち2号」による南極半島Larsen-C棚氷で発生した大規模な氷山分離の観測結果

Posted: Jul 25, 2017, 07:30 (UTC)
Updated: Aug 9, 2017, 7:30 (UTC)

概要

  • 2017年7月12日、南極半島にあるLarsen-C棚氷から巨大な氷山が分離した。
  • JAXAは7月21日に「だいち2号」の広域観測モードによる観測を行い、分離した氷山の全体像を捉えることに成功した。
  • 2017年8月4日の「だいち2号」観測画像から、氷山が海氷によって押し戻されている様子を確認した。
  • 「だいち2号」の特性を生かし、このような雪氷変動を継続的にモニターすることで、地球温暖化との関係や極域環境変動の理解に貢献することができます。

Larsen(ラーセン)棚氷は南極大陸の中でも有数の規模を誇る棚氷で、Larsen-Aは1995年、Larsen-Bは2002年にそれぞれ崩壊しています。Larsen棚氷は現在の西南極の質量損失とそれがおよぼす海水準変動(注1)に影響するため、世界中の雪氷研究者が注目しているところです。Larsen-Cでは、2017年に入りクラックの進行が加速し、同7月12日に大規模な氷山として分離しました。この分離した氷山は重さがおよそ1兆トンと言われ、面積が約5,800 km2もあり、三重県とほぼ同じ大きさです。JAXAは2017年7月21日に「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ、パルサー2(PALSAR-2)の広域観測モード(観測幅350 km)を用いて、分離した氷山の全体像を観測しました。
図1: 2017年7月21日の「だいち2号」の観測範囲

図2: 「だいち2号」による2017年7月21日(左)と2016年8月19日(右)の観測画像。中央の枠線は図3の表示範囲を示す。
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図2は「だいち2号」の広域観測モードによって観測された画像です。赤色と緑色にHV偏波、青色にHH偏波の画像を割り当てています。図の右側に暗く写っているのが海氷で、左側に白く見えるのが棚氷です。図の中央にある枠線で囲まれた部分が今回氷山として分離した部分です。2016年8月19日の画像では、亀裂が始まっている南側からおよそ100 km程度(図2右の矢印の場所)までしか割れ目がありませんが、2017年7月21日の画像では亀裂が全体に入っており、棚氷から完全に分離していることがわかります(図2左)。

図3: 分離した氷山の拡大図。左は2017年7月21日、右は2016年8月19日の観測画像。
(クリックで拡大画像へ)

図3は、図2の枠線範囲を拡大したものです。棚氷上の亀裂がより鮮明に見えます。今回、幅約50 km、長さ約155 kmに渡って棚氷から氷山が分離したことがわかりました。この大規模な氷山の分離によって、内陸側の棚氷の流動速度が加速し、さらなる氷山の分離が発生する可能性があります。天候や昼夜の影響を受けずに広範囲に画像を取得できる「だいち2号」の特性を生かし、このような南極の大規模な雪氷変動を継続的に観測することで、地球規模の温暖化との関係や極域環境変動の理解に貢献することができます。JAXAでは今後も「だいち2号」による当該地域への観測を継続していく予定です。


注1: 海水面の高さが変化すること。近年の地球温暖化による海水の膨張や、氷河の融解水の流入増加による海水面の上昇が懸念されている。




2017年8月9日追記

「だいち2号」による2017年8月4日の観測画像
「だいち2号」による2017年7月21日の観測画像
図4: 「だいち2号」による2017年8月4日と2017年7月21日の観測画像の比較。
マウス等の操作により、画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像間の変化を視覚的に比較することができます(対応していないブラウザでは、単純に2つの画像が並べて表示されることがあります)。 * 対応ブラウザ: IE9 およびそれ以降、Safari5.1 およびそれ以降、Chrome、Firefox、Opera

図4は2017年8月4日に観測された画像と2017年7月21日の画像です。7月21日の画像で明瞭に確認された棚氷と分離した氷山との隙間が小さくなっていることがわかりました。これは、画像の右側にある海氷が棚氷の方向へ動いており、それによって分離した氷山が棚氷方向に押されているためであると考えられます。画像中に見えているいくつかの小さな氷山も海氷と同様に動いていることがわかります(赤矢印)。

参考URL:
http://www.projectmidas.org/blog/calving/
http://www.eorc.jaxa.jp/earthview/2017/tp170726.html

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